針原修さんは、もともとグラフィックデザイナーとして第一線でご活躍されていました。お仕事の傍ら、流木を使って作りはじめた作品「流木の鳥」が、様々な業界の方々に評価され、個展を開催するようになりました。
針原さんのアトリエには、いつもたくさんの流木がストックしてあります。秋の台風シーズンが落ち着いた頃、海岸をまわって拾い集めたり、川や湖で探し歩いたり。時にはハワイの海で出会うことも。拾い集めた流木を丁寧に洗い、乾かして保管しておくのです。
ひとつひとつの流木のフォルムや質感、色合いなどをできるだけ損なわず、活かして作品へと導いていきます。必要以上にイジったり、作為を込めたりせず、流木それぞれの個性を最大限活かして作られているからこそ、嫌味がない、自然体な作品が生まれていくのでしょう。
針原さんは30年以上の間、「流木の鳥」を作り続けています。針原さんに影響を受けて、同じように流木を使って鳥を作っている作家さん(?)が何人か居るようです。ファンシーだったり、作為的だったり、趣味の領域に止まっていたり。針原さんの作品とは圧倒的な違いを感じます。
針原修さんの「流木の鳥」は、30年以上に渡って多くの人々に支持され続けてきました。今では日本に留まらず、アメリカでも評価を高めています。ひとりでも多くのみなさまに、針原さんの「流木の鳥」の魅力をお伝えすることができたら嬉しく思います。
「流木の鳥」との出会いは、20年以上前。かつて青山にあった某インテリアショップにふらっと立ち寄ったときのことでした。日本のみならず世界の有名なデザイナーの家具や作品が陳列されている中で、異彩を放っていました。グッと惹きつけられ、しばらく釘付けになったように見入っていたことと思います。心が揺さぶられるような衝撃的な出来事でした。あまりに素敵すぎて、ひとつに絞りきれずに帰ってしまったことを後になって後悔しました。
どうしても気になって、ふたたびショップを訪れた際、じっくりじっくり時間を掛けて作品を見まわし、出会いを感じた作品をひとつ選んで帰りました。
当時の僕は、鎌倉・由比ヶ浜の近くに住んでいました。海辺の街での暮らしを満喫していたこともあり、なおさら惹かれたのかも知れません。疲れて帰ったときや、落ち込んだときなど、ふとその「流木の鳥」を眺めると、気持ちが落ち着き、癒されたりしました。鎌倉での暮らしの中では、一番愛着を感じていましたし、大切にしていました。
そして、いつの日か自分のショップをオープンすることができたら、針原修さんの「流木の鳥」をお取り扱いさせていただきたい!という思いが芽生え、次第に強くなっていきました。
数年後、また青山のショップを訪れたのですが、「流木の鳥」は数点ディスプレイしてあるだけで、しかも非売品になっていました。もう商品としてはお取り扱いをしなくなってしまったということでした。とても残念な気持ちで帰りました。ふたたび立ち寄った際に、スタッフの方に針原さんの連絡先を教えていただき、いつか自分でショップをオープンするときのために大切に温めていました。
2006年にいよいよclassicoをオープンすることとなりました。内装工事がほぼ終わり、一息ついた頃、温めていた電話番号のメモを握りしめ、電話をしてみましたが、時すでに遅し。事務所は移転してしまったようで、連絡が付かなくなっていました。インターネットで調べても役立つ情報を得ることができないままclassicoのオープンを迎えました。
classicoには何かの縁を期待して、大切にしていた「流木の鳥」をディスプレーしておきました。想いが実ったのか?オープンから1ヶ月ほど経ったある日、針原さんの個展が開催されることを知りました。その個展にうかがった際、残念ながら針原さんにお会いすることはできませんでしたが、「流木の鳥」をひとつ購入し、お会計の際に針原さんにお渡しくださるようお手紙を託して帰りました。
数日経ったある日、針原さんから1通のファックスが届きました。「谷中界隈は子供の頃から慣れ親しんだ街です。そんな地域で、作品をお取り扱いしていただけることは、たいへん嬉しく思います。近いうちにお店にうかがいます」と言った内容が書いてありました。
「流木の鳥」をお取り扱いすることができるかも!夢のようなお話でした。とても嬉しく、ワクワクしながらその日を待ちました。谷根千(谷中・根津・千駄木)からも程近い街・田端にお住まいの針原さん。自転車に乗ってclassicoにご来店になりました。店内をご覧いただき、気さくにお話いただきました。そして、お取り扱いをさせていただくこととなりました。
「流木の鳥」をお取り扱いしはじめてから約16年。classicoを語る上では、欠かすことのできない作品となリました。これまで販売してきた作品は、400点以上になります。大きさやかたち、質感や色合い、台座の形など、それぞれの作品にはそれぞれの個性があり、味わいがあります。もちろんですが、すべて世界にひとつだけの作品。同じものはありません。
みなさまが日々を豊かに暮らすための掛け替えのない作品となるかも知れません。また、みなさまの日常にそっと寄り添ってくれる作品となるかも知れません。「流木の鳥」との出会いも一期一会です。
みなさまにも素敵な出会いが訪れますように、心より願っております。